こんにちは。
OTの赤﨑です。
今回は、訪問した際にお母さんからお聞きした「貴重なお話」をご紹介します。
この掲載は、そのお母さんからもご了承いただいています。お母さん、ありがとうございます。
その前に・・・。
訪問リハビリでお家に伺うとよくタブレットで動画を観ていたり、ゲームをしていたりしてなかなか私の方を向いてもらえず、「まあ、そりゃそうか」と思いながらも、どうしたら私に興味を向けてもらえるか考えることがあります。
そんな中での今回のお話でした。
私が訪問リハビリで伺っている自閉症の高校生のお兄ちゃん(以下、Aくん)のお話です。
Aくんはゲームが好きで、お家におられる時はいつも決まった椅子に座ってスマホやSwitchで静かに、集中してずっとゲームをされています。言語的なやり取りは十分ではなく、文字の理解も難しいため、私の訪問時もタブレットを使った「将棋」のゲームを通して、指差しや身振り手振りでコミュニケーションを取っています。
Aくんが詰め将棋に夢中になっている間のお母さんからのお話で、このゲームにまつわるお話をお聞きしました。
幼児期Aくんは家にいると、椅子に突進・体当たりすることを繰り返し、時には当たり所が悪く流血するぐらいの多動だったようです。並んで待つことも苦手で途中で逃げ出し、捕まえてはまた列の一番後ろに並び直すこともしばしばだったようです。その時通っていたOTで粘土を手で押しつぶすことができず、Aくんは考えておでこで頭突きするようにして押しつぶしていたようです。
ゲームは当時Aくんのお兄ちゃんがやっていて、Aくんもそれを見ていましたが、ゲームに執着させてはいけないし壊してしまうのではないかと思い、お母さんはさせていなかったようです。しかし、OTでの粘土の一場面を見てお母さんは本人にゲームをさせてみようと思われました。
最初は、力の調節が難しくコントローラーのボタンを力いっぱいバンバン叩くように押していたようですが、Aくんのゲームがやりたいという気持ちと根っからの負けず嫌いで、そんな操作でも集中してゲームに取り組んでいたようです。そのため、お兄ちゃんとお母さんはAくんへの繰り返しの声かけや練習でゆっくり押したり、そーっと押したり、タイミングよく押したりすることが出来るようになってきました。
そして、その頃から粘土を手で押しつぶせるようになり、また多動も落ち着きゲームを持たせていれば並んで待てるようになったようです。
加えて、昔はダンスや体操なども嫌いで、通園施設での体操の時間になると逃げて滑り台の上に上がり、終わるまで降りてこなかったようですが、「太鼓の達人」でリズム感が養われ、ダンスが好きになり、支援学校の発表会でダンスを披露された動画を見せて頂きました。
お母さんはこれまでの事を振り返り、Aくんにゲームをさせながら列に並ばせていることに周りから白い目で見られても、Aくんが落ち着いて並んでくれているから途中で逃げ出されるよりもよっほどその方が楽だし、なんとも思わない。ゲームを通して、Aくんの多動が落ち着き、できる事が増えたので、それ以降うるさく言わずゲームをさせています。
とおっしゃられていました。
「ゲームすること」に関しては、障がいを持っていてもいなくても賛否両論、いろいろな意見がありますが、私にとってもOTとしての視野を拡げさせてもらえたお話でした。
それ以上に、これまでの経過を想像するとお母さんのこれまでの気づき、取り組みに、すごいなと鳥肌が立ち、感動しました。
最後に、持ち前の負けず嫌いと集中力で難しい「将棋」のルールと攻め方を、繰り返し繰り返し行うことで覚えたAくんにも脱帽です。「すげーな、Aくん!」
これからも、ご家族からお聞きした「貴重なお話」を発信していければと思います。
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